踊る大捜査線THE MOVIE3 奴らを解放せよ、犯人とどこかで会った?

ドラマ

2010年に公開され、新湾岸署の門出を揺るがす大事件を描いた『踊る大捜査線 THE MOVIE3 奴らを解放せよ』。

この作品で湾岸署、そして青島俊作の前に立ちはだかった犯人、須川圭一。

彼の狡猾な知能と警察への深い恨みは、観客に強烈な印象を与えました。

多くのファンが彼の動機や背景を考察しましたが、実は、彼と青島刑事をつなぐ線は、我々が思うよりずっと昔、すべての始まりの地点にまで遡ります。

青島が口にしたかもしれない一言、「君、どこかで会ったことないか?」という言葉を解説します。

踊る大捜査線THE MOVIE3奴らを解放せよ、犯人とどこかで会った?:ドラマ第一話の「出会い」

物語を理解する上で最も重要な鍵は、1997年に放送されたテレビドラマ版の記念すべき第一話に隠されています。

サラリーマンから刑事に転職したばかりの青島俊作が、初めての事件に情熱を燃やしていたあの頃。

彼は管内で起きた事件の関係者として、一人の青年に事情聴取を行っていました。

当時、膨大な捜査情報の一つとして処理されたその青年こそ、後の『MOVIE3』で湾岸署を震撼させる若き日の須川圭一だったのです。

もちろん、当時の青島にとって、須川は数多く聴取した一般人の一人に過ぎません。

熱意はあっても経験の浅い青島が、その青年の顔と名前を十数年後まで覚えているはずもありませんでした。

踊る大捜査線THE MOVIE3奴らを解放せよ、犯人とどこかで会った?:十数年の歳月が意味するもの

この「忘れられた出会い」は、物語全体に深い意味をもたらします。

青島にとって:

須川は「覚えていない過去」。

刑事としての長いキャリアの中で、対処してきた無数の事件、関わってきた無数の人々のうちの一人。

彼にとっては日常業務の一コマでした。

須川にとって:

青島(=警察)との接触は「忘れられない過去」。

この事情聴取が、彼のその後の人生にどのような影響を与えたのかは定かではありません。

しかし、この時の警察の対応が、彼の内に警察組織への不信感や恨みを植え付ける原体験となった可能性は否定できません。

青島にとっては些細な出来事が、須川にとっては人生を決定づけるほどの出来事だったのかもしれない。

この非対称性こそが、二人の間に横たわる溝の深さを物語っています

踊る大捜査線THE MOVIE3奴らを解放せよ、犯人とどこかで会った?:「君、どこかで」

『MOVIE3』の捜査が進展し、青島が犯人・須川圭一と対峙した時、彼の脳裏には既視感(デジャヴ)がよぎったはずです。

「君、どこかで……」

この言葉は、単に容姿が似ているというレベルの話ではありません。

それは、青島自身の刑事としての歴史そのものへの問いかけです。

自分が過去に関わった事件、救えなかった人々、そして意識すらしなかった小さな接触が、時を経て巨大な悪意として自分に返ってくる。

須川圭一という存在は、青島が背負ってきた刑事という仕事の「業(ごう)」そのものを象徴していたのです。

須川の犯罪は、青島個人への復讐というよりも、「俺を忘れただろう」という警察組織全体への痛烈なメッセージでした。

自分をその他大勢の一人としか見なかった組織に対し、決して忘れられない存在としてその名を刻みつけようとした、歪んだ自己表現だったと言えるでしょう

踊る大捜査線THE MOVIE3奴らを解放せよ、犯人とどこかで会った?:まとめ

須川圭一と青島俊作が、実はドラマ第一話で接触していたという事実は、『踊る大捜査線』シリーズを貫く大きなテーマを改めて我々に突きつけます。

それは、「事件に大きいも小さいもない。刑事が出会う一人ひとりが、それぞれの人生を生きる人間である」という、青島が抱き続けた信念そのものです。

青島は覚えていなかったかもしれない。

しかし、その「忘れられた出会い」が最悪の形で蘇ってきたのが『MOVIE3』の事件だったのです。

犯人・須川圭一は、まさに青島が歩んできた刑事人生の地続きの未来に、必然として現れた宿敵だったのかもしれません。

コメント