映画『大怪獣のあとしまつ』が発表されるや否や、一部のファンの間で「怪獣8号のパクリでは?」という声が上がっています。
両作品には“怪獣の死骸処理”という共通の設定がありますが、本当に似ているのでしょうか?
本記事では、『大怪獣のあとしまつ』と『怪獣8号』のストーリーや制作時期、設定の違いを詳しく比較し、「パクリ疑惑」の真相に迫ります。
- 『大怪獣のあとしまつ』と『怪獣8号』の違いと共通点
- パクリ疑惑の真相と作品ごとの制作時期の事実
- 両作品の魅力とそれぞれの楽しみ方
『大怪獣のあとしまつ』は『怪獣8号』のパクリではない理由
映画『大怪獣のあとしまつ』が発表された際、SNSを中心に「これは怪獣8号のパクリでは?」という声が一部で挙がりました。
どちらの作品にも“怪獣の死骸処理”というユニークな設定が含まれていることから、そのような印象を抱いた人も多かったようです。
しかし、制作時期や物語構成を調べていくと、その疑問は早計であることが明らかになります。
設定が似ているのは事実だが、企画は怪獣8号よりも先
たしかに『怪獣8号』は2020年7月に連載がスタートし、主人公が怪獣の清掃員という点で目を引きました。
一方、『大怪獣のあとしまつ』は2021年7月に映像が初公開されたため、後発作品のように見えるかもしれません。
ですが、実は本作の制作発表は2020年3月3日と、怪獣8号の連載開始よりも数ヶ月早く、構想はさらに5年以上も前に遡ると言われています。
この点から見ても、単なる模倣でないことは明白です。
両作品のテーマや展開に大きな違いがある
設定が似ているとはいえ、その描き方や物語の方向性には大きな違いがあります。
『怪獣8号』はバトル漫画として進化を遂げ、今や主人公が怪獣へと変身し戦うストーリーへと移行しています。
一方『大怪獣のあとしまつ』は、死んだ怪獣をどう処理するかという社会的かつ風刺的なテーマを描いた作品であり、アクションというよりもシリアスとコメディが混在する独特のスタイルを取っています。
このように、両者は共通点よりも違いの方が多いといえるでしょう。
『大怪獣のあとしまつ』のあらすじと世界観
『大怪獣のあとしまつ』は、これまで描かれることのなかった“怪獣が死んだ後”をテーマにした、完全オリジナルの怪獣映画です。
人類を苦しめた巨大怪獣が突然死亡するという、通常の怪獣映画とは真逆のスタートを切り、そこから想像もしない問題が浮上します。
この「終わったはずの脅威」が新たな国家的リスクになるという構図が、本作の魅力の一つでもあります。
巨大怪獣の死後に焦点を当てた完全オリジナル脚本
本作は、松竹と東映という2大映画会社が初めて手を組んだ意欲作であり、脚本・監督は独特の世界観を描く三木聡氏が担当。
物語の出発点は、“ある日突然、怪獣が死ぬ”という予想外の出来事。
それにより、これまで存在しなかったジャンル――死んだ怪獣をどうするか?という社会問題系のドラマが展開されていきます。
本作はそのテーマ性からして、他の怪獣作品とは一線を画しています。
国家崩壊を招く怪獣の死骸、特殊部隊が立ち向かう
怪獣の死骸を放置すると腐敗ガスが充満し、生態系や経済、政治にも深刻な影響が出る可能性が。
それを受けて登場するのが、首相直属の特殊部隊に所属する帯刀アラタ(演:山田涼介)と、環境大臣秘書であり元婚約者の雨音ユキノ(演:土屋太鳳)です。
この2人が“怪獣の後始末”という前代未聞のミッションに挑む様子を描くことで、映画はシリアスさと風刺を同時に含む仕上がりとなっています。
舞台は現代日本。現実と地続きの感覚で鑑賞できる点も、観客に新しい問いを投げかける力となっています。
『怪獣8号』との違いを徹底比較
『大怪獣のあとしまつ』と『怪獣8号』は、「怪獣の死骸処理」という共通点から並べられることが多い作品ですが、その実態はまったく異なるジャンルと目的を持つ物語です。
ここでは、両作品の構造やテーマを比較し、表面的な類似の裏にある本質的な違いを明らかにしていきます。
主人公の立場と物語の目的が全く異なる
『怪獣8号』の主人公・日比野カフカは、もともと民間の清掃会社に勤めており、怪獣の死骸を片付ける仕事に従事していました。
しかし物語が進むにつれ、彼自身が怪獣に変身し、人類を守る“防衛隊員”として活躍する展開へと変化していきます。
一方、『大怪獣のあとしまつ』の主人公・帯刀アラタは国家直属の特殊任務部隊に所属する公務員であり、その任務は「死んだ怪獣の死骸をどう処理するか」に特化したものです。
つまり、カフカが“戦う男”なら、アラタは“後始末を担う男”という違いが明確に存在します。
『怪獣8号』はSFバトル、『大怪獣のあとしまつ』は社会風刺ドラマ
ジャンル面でも、両作品は全く異なる方向を目指しています。
『怪獣8号』はジャンプらしい王道のバトル展開で、怪獣を倒すスピード感と成長物語が主軸です。
反して、『大怪獣のあとしまつ』はアクションを控えめにし、行政的な問題、環境汚染、政治の思惑といった“現実の縮図”を描く作品です。
シリアス一辺倒ではなく、三木聡監督らしいユーモアも散りばめられており、どちらかというとコメディ×風刺ドラマに近い構成です。
このように、似ているようでまったく違う両作品は、「怪獣の死骸処理」というアイディアの活かし方が対極的であるといえるでしょう。
制作時期と公開情報の時系列で見る真実
「どちらが先か?」という議論に終止符を打つには、作品の企画・制作スケジュールを正確に把握することが必要です。
特に『大怪獣のあとしまつ』は、映像公開のタイミングだけを見てしまうと『怪獣8号』の後に見えてしまい、誤解が生じやすくなっています。
ここでは、両作品の時系列を整理しながら、パクリ疑惑が誤解であることを明らかにします。
怪獣8号より前に構想されていた『大怪獣のあとしまつ』
『怪獣8号』の連載が開始されたのは2020年7月3日。
一方で、『大怪獣のあとしまつ』の制作発表は2020年3月3日にすでに行われており、さらに遡ること5年前には構想がスタートしていたことが明らかになっています。
つまり、両者の誕生には明確なタイムラグがあり、『大怪獣のあとしまつ』が“後出し”という見方は正確ではありません。
実際には、企画・脚本の段階から本作が独立した発想で動いていたことがわかります。
コロナによる撮影延期が誤解を招いた要因
本来『大怪獣のあとしまつ』は、2020年中の公開を目指していた作品です。
しかし、新型コロナウイルスの影響により、撮影スケジュールが大幅に変更され、公開が2022年に延期されてしまいました。
この延期があったため、一般の観客には“怪獣8号の後に生まれた作品”という印象を与えてしまったのです。
制作の舞台裏を知らなければ仕方のない誤解ではありますが、時系列を正確に見れば、パクリとは呼べないことがよく分かります。
キャストと監督陣から見る作品の方向性
『大怪獣のあとしまつ』がただの“話題作”で終わらない理由の一つに、キャストと監督陣の充実ぶりがあります。
主演にはアイドルとしても俳優としても活躍中の山田涼介さんと、映画・ドラマに引っ張りだこの土屋太鳳さんという豪華な顔ぶれ。
さらに、独自の作風で知られる三木聡監督が脚本と演出の両方を手がけることで、他の怪獣映画にはないユニークな仕上がりが期待されています。
山田涼介×土屋太鳳のW主演による注目度
山田涼介さんが演じる主人公・帯刀アラタは、首相直属の特殊部隊員という硬派な役柄です。
山田さんは『暗殺教室』『鋼の錬金術師』などの話題作で確かな演技力を発揮しており、本作でもリアルと非現実のバランスを巧みに演じることが期待されています。
一方の土屋太鳳さんは、環境大臣秘書という政治的立場を持ちながらも、主人公の元婚約者という複雑な役どころ。
ラブコメからアクションまでこなせる彼女の演技は、作品に感情の厚みを加える要素となるでしょう。
コメディ色が得意な三木聡監督の演出に期待
監督・脚本を務める三木聡氏は、『俺俺』『時効警察』『音量を上げろタコ!』など、一風変わったユーモアと社会風刺を融合させた作風で知られています。
本作でも、ただシリアスに描くだけではなく、死んだ怪獣の“処理”という荒唐無稽な題材を、笑いと皮肉を交えて表現してくる可能性が高いです。
ジャンルの枠に収まらない作品を多く手がけてきた監督だけに、本作も“ただの怪獣映画では終わらない”予感が漂っています。
『大怪獣のあとしまつ』『怪獣8号』の比較まとめと作品の魅力
ここまで『大怪獣のあとしまつ』と『怪獣8号』を多角的に比較してきましたが、結論としては似ているのは一部の設定だけであり、作品全体としてはまったく異なる性質を持っていることが分かります。
両作品はそれぞれに違った魅力を持ち、比較することでむしろジャンルの広がりや多様性の面白さが見えてきます。
以下に、その違いと魅力を総括します。
似て非なる2作品、それぞれの魅力を楽しもう
『怪獣8号』はバトルを主軸に据えたエンタメ性の強いSF作品で、“変身”と“戦い”を通して読者にスカッとした爽快感を与えてくれます。
一方、『大怪獣のあとしまつ』は、戦いが終わった後の静かな混乱と、社会の脆弱性を描き出す物語です。
「同じテーマをこんなにも違う視点で描けるのか」と感じる点こそが、両作品の最大の魅力だと言えるでしょう。
両作品のファンが満足できる視点の違いとは
『怪獣8号』を読んで「もっと清掃員としての部分を見たかった」と思った方にとって、『大怪獣のあとしまつ』はその欲求を満たしてくれる一作になるはずです。
逆に『大怪獣のあとしまつ』を見てから『怪獣8号』を読めば、「もし死体処理側の人間が戦うことになったら…?」という別の可能性を想像できるかもしれません。
どちらか一方ではなく、両方を体験することで初めて見えてくる深いテーマ性と世界観の対比。
その面白さをぜひ味わってみてください。
- 『大怪獣のあとしまつ』は怪獣8号のパクリではない
- 企画は怪獣8号よりも先に始まっていた
- 両作品はテーマ・ジャンル・展開が全く異なる
- 怪獣の死後を描くという点だけが共通
- 主演・監督陣の個性が作品の方向性を決定づける
- 比較することで両作品の魅力がより際立つ
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