1997年の放送開始以来、日本の刑事ドラマの歴史を塗り替えた金字塔『踊る大捜査線』。
その魅力は、リアルな警察組織の描写、ユーモアとシリアスの絶妙なバランス、そして何よりも青島俊作をはじめとする個性豊かなキャラクターたちの人間ドラマにあります。
今回は、シリーズの中でも特に青島の「正義」が試され、手に汗握る展開で多くの視聴者の記憶に刻まれた第9話「湾岸署大パニック 刑事青島危機一髪」のあらすじとネタバレを、より詳細に深く掘り下げてご紹介します。
阿部サダヲさんがコッソリTVの表舞台でも知られるようになったのは「踊る大捜査線」第9話「湾岸署大パニック 刑事青島危機一髪」被害者の冴えない兄:佐伯五郎役。あれから22年。それが今やNHK大河ドラマ史上最高傑作の主役。何だか嬉しくなっちゃうじゃんねぇ。#いだてん #いだてん最高じゃんねぇ pic.twitter.com/KCeHkONJsI
— Dark Knight (@DarkKnight_jp) November 17, 2019
踊る大捜査線 第9話、青島ピンチ?:史上最悪の保護対象者
物語は、湾岸署管内で発生した殺人事件から始まります。
被害者の夫の愛人であった武下美奈子が、事件の重要参考人として、またマスコミの過熱報道から身を守るため、湾岸署で保護されることになりました。
しかし、この美奈子がとんでもない「トラブルメーカー」でした。
署に到着するや否や、反省や怯えの色は一切見せず、「私は悪くない」「当然の権利」とばかりにふてぶてしい態度を貫きます。
食事の文句は当たり前、刑事たちを顎で使い、自分本位な要求を次々と突きつけるのです。
その横柄な振る舞いは、職務に忠実な刑事たちの神経を逆なでします。
特に、すみれ(深津絵里)をはじめとする女性警察官たちは、同じ女性として彼女の厚顔無恥な態度に強い嫌悪感を抱き、署内の空気は日に日に悪化。
青島(織田裕二)もまた、正義感と職務との間で揺れ動きながら、美奈子の身辺警護という厄介な任務にあたるのでした。
踊る大捜査線 第9話、青島ピンチ?:群衆に潜む殺意の影
連日、スクープを狙うマスコミが湾岸署に殺到し、玄関前はごった返していました。
その喧騒の中、青島は人垣の中にいる一人の男に、無意識に視線を奪われます。
他の記者たちがカメラやマイクを向ける中、その男だけは何も持たず、ただ凍てつくような、憎悪に満ちた眼差しで湾岸署の入り口をじっと見つめていました。
その目には、単なる好奇や報道の熱意とは明らかに違う、深い悲しみとどす黒い殺意が宿っていました。
青島の刑事としての直感が、「あの男は危険だ」と警鐘を鳴らします。
しかし、上司である袴田課長(小野武彦)らに進言しても、「マスコミに紛れた野次馬だろう」「思い過ごしだ」と一蹴されてしまいます。
組織の中では、具体的な根拠のない「勘」は通用しません。
もどかしさを感じながらも、青島はその男から目を離すことができませんでした。
踊る大捜査線 第9話、青島ピンチ?:刑事、凶刃に倒れる
数日後、ついに美奈子の保護が解除され、湾岸署を後にする時が来ます。
マスコミが一斉にフラッシュを焚く中、彼女が車に乗り込もうとした、まさにその瞬間でした。
青島が警戒していたあの男が、獣のような雄叫びを上げながら群衆から飛び出し、隠し持っていた刃物を美奈子に向かって振りかざしたのです。
男の正体は、殺された被害者の兄・佐伯でした。
最愛の妹を無惨に殺され、その原因となった美奈子が反省もせずにいることが許せなかったのです。
復讐心に駆られた凶行でした。
誰もが凍りつく一瞬。
しかし、青島だけは違いました。
考えるより先に体が動いていました。
憎まれ口を叩き、署員を散々振り回した美奈子。
しかし、彼女もまた、守るべき「市民」の一人。
青島は迷うことなく美奈子を突き飛ばし、その身を盾にして佐伯の刃を真正面から受け止めたのです。
鋭い痛みが胸を貫き、青島の体はゆっくりと地面に崩れ落ちていきました。
すみれの悲鳴と、仲間たちの怒号が湾岸署に響き渡りました。
踊る大捜査線 第9話 湾岸署大パニック 刑事青島危機一髪 | TVer https://t.co/xERqzYh5ly
阿部サダ王が出てた👑
傷害罪で立件しないのは納得行かないな… pic.twitter.com/yTAm9SMDOH— 13i (@brunhild) October 11, 2024
踊る大捜査線 第9話、青島ピンチ?:奇跡の生還と、和久の言葉
しかし、奇跡は起こりました。
佐伯の一撃は、青島がいつも祖母のお守りとして胸ポケットに入れていた、小さな金属のケースによって防がれていたのです。
刃は心臓をわずかに逸れ、幸いにも命に別状はありませんでした。
まさに九死に一生を得た瞬間でした。
一方、我に返り呆然とする佐伯は、その場で刑事たちに取り押さえられます。
取調室で、ベテラン刑事の和久(いかりや長介)が静かに佐伯に向き合います。
「気持ちはわかる。だが、あんたがここで罪を犯したら、殺された妹さんが一番悲しむんじゃないのか」。
和久の、多くを語らずも心に染み入る言葉と、雪乃(水野美紀)の涙ながらの説得が、凝り固まった佐伯の心を溶かしていきます。
彼は自らの過ちを深く悔い、二度と過ちを犯さないことを誓うのでした。
法で裁くことだけが正義ではない。
湾岸署の刑事たちは、佐伯を立件しないという、人間味あふれる決断を下します。
この事件は、青島に刑事という仕事の重さを改めて突きつけ、そして、どんな相手であろうと命をかけて守り抜くという彼の信念をより強固なものにしました。
そして、自分のために体を張ってくれた青島の姿は、自己中心的だった美奈子の心にも、確かな変化の兆しを残したのでした。
ただのサスペンスに終わらない、心揺さぶる人間ドラマが、このエピソードを不朽の名作たらしめているのです。



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