孤独のグルメ、11シーズンの撮影現場に迫る

ドラマ

2024年秋、テレビ東京の人気ドラマ『孤独のグルメ』が待望の第11シーズンを迎えた。

1994年に原作漫画が連載開始されてから30年、ドラマとしては2012年の初放送から13年が経つ今も、着実にファン層を広げている。

この作品は、主演の松重豊演じる輸入雑貨商・井之頭五郎が、仕事の合間にふと立ち寄る街角の食堂や食事処で食べる「一人飯」を淡々と描く、いわば“静かなグルメドラマ”である。

今回のシーズン11では、シリーズの魅力はそのままに、撮影現場の工夫やキャスト・スタッフの思いが一層深まっている。

本記事では、現場の裏側に焦点を当て、作品の魅力とその舞台裏に迫る。

孤独のグルメ、11シーズンの撮影現場に迫る:静かなブーム、「孤独のグルメ」とは何か

まずは、この作品がなぜこれほどまでに根強い人気を保っているのか、改めて考えてみたい。

『孤独のグルメ』の特徴は、華やかな演出や派手な展開がほとんどないことだ。

主人公・井之頭五郎が出張先の街を歩き、偶然入った食堂で食べる。

そこでの“食の出会い”と、五郎の心の声で語られる独特な内省的モノローグが主軸である。

セリフも少なく、BGMも控えめ。

だがそれが「見ていて落ち着く」「一緒にご飯を食べているような気分になる」と視聴者に高い共感を呼び、SNSでも「飯テロドラマ」として話題になる。

孤独のグルメ、11シーズンの撮影現場に迫る:シーズン11の舞台はどこに?

今シーズンの撮影は、東京・神奈川・千葉といった首都圏に加え、北陸地方にも足を伸ばしている。

例えば、富山県高岡市では、昭和の雰囲気を色濃く残す定食屋が舞台となった。

ここでは名物の「とろろ昆布おにぎり」や「昆布締め寿司」を、五郎が「こりゃ、北陸の海が凝縮されてるな……」と感嘆しながら味わう場面が印象的だ。

このように、ロケ地は全国各地に広がっており、視聴者が「このお店、実際に行ってみたい!」と思えるようなリアリティを追求している。

実際、ドラマに登場したお店は放送直後から長蛇の列になることも多く、「聖地巡礼」として多くのファンが現地を訪れる。

孤独のグルメ、11シーズンの撮影現場に迫る:1話にかける熱量

『孤独のグルメ』の撮影は、1話約30分の放送時間の中に、非常に緻密なスケジュールと演出が詰め込まれている。

特に、食事シーンはワンカットワンカットを丁寧に撮影しており、照明の当て方、湯気の立ち方、箸の動きに至るまで、細かく演出が入る。

実際、1食分の撮影に要する時間はおよそ4〜5時間。

松重豊は「一見、ただご飯を食べてるだけに見えるかもしれませんが、あの“うまそうに食べる”という演技が一番難しい」と語る。

特にNGが出ると、同じ料理を何度も食べなければならないため、撮影終盤には「満腹との戦い」になるという。

また、料理の鮮度を保つため、キッチン担当スタッフが裏で常に新しい料理を用意しており、シーンごとに“ベストな見た目”を整える努力も欠かさない。

料理が冷めないよう、湯気を出すために隠し湯を使うこともあるという。

孤独のグルメ、11シーズンの撮影現場に迫る:松重豊の変化と向き合い方

主演の松重豊は、70年代生まれの名バイプレイヤーとして知られるが、本作ではその「食う演技」が評価され、今や“孤独のグルメ=松重豊”というイメージが定着している。

だが、本人は当初、「食べるだけのドラマに、どこまで意義があるのか」と懐疑的だったという。

しかし、年齢を重ねるにつれて、役柄と自分自身が重なってきたと語る。

「昔は“孤独”がちょっと寂しい言葉に感じられたけど、今はそれを“自由”とか“贅沢”と捉えられるようになった。」

シーズン11では、年齢を重ねた五郎の姿も自然に描かれており、少し疲れた表情、歩くスピード、注文の仕方にも変化が見られる。

これは演出というより、リアルな“時の流れ”をそのまま映しているとも言える。

孤独のグルメ、11シーズンの撮影現場に迫る:現場のこだわりとチームワーク

撮影現場では、少人数のチームで動くことが多く、照明・カメラ・演出の連携が極めて重要だ。

特にこだわるのは「リアリティ」。

演出の溝口監督は、「店の空気を壊さないよう、カメラを置く位置や照明の強さをギリギリまで調整している」と語る。

また、地元のお店との信頼関係も不可欠だ。

ロケ地候補の選定段階から、スタッフは何度も現地に足を運び、店主と話し合いを重ねる。

実際の撮影では、営業中のお店を一時貸し切りにする場合もあり、その調整にも数週間がかかるという。

また、このドラマの普遍的な魅力は、「共感」にある。

誰もが一度は経験したことのある“ひとり飯”。

その静かで、でもちょっとした発見がある時間を、丁寧に描写しているからこそ、多くの人の心に残るのだ。

孤独のグルメ、11シーズンの撮影現場に迫る:まとめ

『孤独のグルメ』第11シーズンは、単なるグルメドラマではなく、「人が生きていることの証」としての食を、静かに、しかし力強く描いている。

そしてその背後には、演者やスタッフの並々ならぬ情熱と誠実さがある。

カメラの向こう側には、地元の人々の協力、長年培われたチームワーク、そして松重豊の深まる演技力がある。

そうした全てがあって、初めて「一皿の美味しさ」が画面越しに伝わってくるのだ。

次回の放送では、五郎はどんな町を歩き、どんな料理に出会うのか。その一歩一歩が、視聴者にとっても、また新たな旅となるだろう。

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