2024年秋、テレビ東京の人気ドラマ『孤独のグルメ』が待望の第11シーズンを迎えた。
1994年に原作漫画が連載開始されてから30年、ドラマとしては2012年の初放送から13年が経つ今も、着実にファン層を広げている。
この作品は、主演の松重豊演じる輸入雑貨商・井之頭五郎が、仕事の合間にふと立ち寄る街角の食堂や食事処で食べる「一人飯」を淡々と描く、いわば“静かなグルメドラマ”である。
今回のシーズン11では、シリーズの魅力はそのままに、撮影現場の工夫やキャスト・スタッフの思いが一層深まっている。
本記事では、現場の裏側に焦点を当て、作品の魅力とその舞台裏に迫る。
孤独のグルメ(漫画版)全二巻
孤独のグルメ(ドラマ版)シーズン11~ pic.twitter.com/FLs157dvpP— たるたる3世 (@Vanitas__1226) January 17, 2025
孤独のグルメ、11シーズンの撮影現場に迫る:静かなブーム、「孤独のグルメ」とは何か
まずは、この作品がなぜこれほどまでに根強い人気を保っているのか、改めて考えてみたい。
『孤独のグルメ』の特徴は、華やかな演出や派手な展開がほとんどないことだ。
主人公・井之頭五郎が出張先の街を歩き、偶然入った食堂で食べる。
そこでの“食の出会い”と、五郎の心の声で語られる独特な内省的モノローグが主軸である。
セリフも少なく、BGMも控えめ。
だがそれが「見ていて落ち着く」「一緒にご飯を食べているような気分になる」と視聴者に高い共感を呼び、SNSでも「飯テロドラマ」として話題になる。
神奈川県、「孤独のグルメ」にも出た老舗洋食店の「キッチン友」。
すっごい路地裏…というか路地だけで構成された迷宮の奥みたいなところで胸がキュンキュンする。
そこで1人で食べたワンパクなプレートは最高にうまかったよな。
孤独のグルメのシーズン11、いつやるの?#孤独のグルメ #キッチン友 pic.twitter.com/qQmFOYPyef— 旅人YAMA@日本分割7周目 (@yama31183) April 12, 2024
孤独のグルメ、11シーズンの撮影現場に迫る:シーズン11の舞台はどこに?
今シーズンの撮影は、東京・神奈川・千葉といった首都圏に加え、北陸地方にも足を伸ばしている。
例えば、富山県高岡市では、昭和の雰囲気を色濃く残す定食屋が舞台となった。
ここでは名物の「とろろ昆布おにぎり」や「昆布締め寿司」を、五郎が「こりゃ、北陸の海が凝縮されてるな……」と感嘆しながら味わう場面が印象的だ。
このように、ロケ地は全国各地に広がっており、視聴者が「このお店、実際に行ってみたい!」と思えるようなリアリティを追求している。
実際、ドラマに登場したお店は放送直後から長蛇の列になることも多く、「聖地巡礼」として多くのファンが現地を訪れる。
孤独のグルメ、11シーズンの撮影現場に迫る:1話にかける熱量
『孤独のグルメ』の撮影は、1話約30分の放送時間の中に、非常に緻密なスケジュールと演出が詰め込まれている。
特に、食事シーンはワンカットワンカットを丁寧に撮影しており、照明の当て方、湯気の立ち方、箸の動きに至るまで、細かく演出が入る。
実際、1食分の撮影に要する時間はおよそ4〜5時間。
松重豊は「一見、ただご飯を食べてるだけに見えるかもしれませんが、あの“うまそうに食べる”という演技が一番難しい」と語る。
特にNGが出ると、同じ料理を何度も食べなければならないため、撮影終盤には「満腹との戦い」になるという。
また、料理の鮮度を保つため、キッチン担当スタッフが裏で常に新しい料理を用意しており、シーンごとに“ベストな見た目”を整える努力も欠かさない。
料理が冷めないよう、湯気を出すために隠し湯を使うこともあるという。
孤独のグルメ、11シーズンの撮影現場に迫る:松重豊の変化と向き合い方
主演の松重豊は、70年代生まれの名バイプレイヤーとして知られるが、本作ではその「食う演技」が評価され、今や“孤独のグルメ=松重豊”というイメージが定着している。
だが、本人は当初、「食べるだけのドラマに、どこまで意義があるのか」と懐疑的だったという。
しかし、年齢を重ねるにつれて、役柄と自分自身が重なってきたと語る。
「昔は“孤独”がちょっと寂しい言葉に感じられたけど、今はそれを“自由”とか“贅沢”と捉えられるようになった。」
シーズン11では、年齢を重ねた五郎の姿も自然に描かれており、少し疲れた表情、歩くスピード、注文の仕方にも変化が見られる。
これは演出というより、リアルな“時の流れ”をそのまま映しているとも言える。
孤独のグルメ、11シーズンの撮影現場に迫る:現場のこだわりとチームワーク
撮影現場では、少人数のチームで動くことが多く、照明・カメラ・演出の連携が極めて重要だ。
特にこだわるのは「リアリティ」。
演出の溝口監督は、「店の空気を壊さないよう、カメラを置く位置や照明の強さをギリギリまで調整している」と語る。
また、地元のお店との信頼関係も不可欠だ。
ロケ地候補の選定段階から、スタッフは何度も現地に足を運び、店主と話し合いを重ねる。
実際の撮影では、営業中のお店を一時貸し切りにする場合もあり、その調整にも数週間がかかるという。
また、このドラマの普遍的な魅力は、「共感」にある。
誰もが一度は経験したことのある“ひとり飯”。
その静かで、でもちょっとした発見がある時間を、丁寧に描写しているからこそ、多くの人の心に残るのだ。
孤独のグルメ、11シーズンの撮影現場に迫る:まとめ
『孤独のグルメ』第11シーズンは、単なるグルメドラマではなく、「人が生きていることの証」としての食を、静かに、しかし力強く描いている。
そしてその背後には、演者やスタッフの並々ならぬ情熱と誠実さがある。
カメラの向こう側には、地元の人々の協力、長年培われたチームワーク、そして松重豊の深まる演技力がある。
そうした全てがあって、初めて「一皿の美味しさ」が画面越しに伝わってくるのだ。
次回の放送では、五郎はどんな町を歩き、どんな料理に出会うのか。その一歩一歩が、視聴者にとっても、また新たな旅となるだろう。
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