王様のレストラン 4話が示す「プロ」の本質

ドラマ

ベル・エキプに新オーナーが着任してから早1ヶ月。

千石の厳格な指導で客足は戻りつつあるものの、従業員たちの不満は限界に達する。

第4話は、ストライキという形で巻き起こる”反乱”と、その中で浮かび上がるプロとしての矜持を描いた、三谷幸喜らしいコメディとヒューマンドラマの傑作回だ。

王様のレストラン 4話が示す「プロ」の本質:基本情報

エピソードデータ

第4話のタイトルは「偽りの料理の鉄人」。

1995年5月10日(水)にフジテレビ系で放送された。

全11話構成の本作において、序盤のヤマ場となる重要なエピソードで、千石と従業員たちの対立が頂点に達する回として多くのファンに記憶されている。

王様のレストラン 4話が示す「プロ」の本質:あらすじ前半

前半|従業員たちの反乱

ベル・エキプに新オーナー・原田禄郎(筒井道隆)が着任してからちょうど1ヶ月が経過した。

伝説のギャルソン・千石武(松本幸四郎)の指導により、以前よりも客足は戻ってきている。しかし”繁盛している”とはまだ言いがたい状況だ。

この日、千石はシェフ・磯野しずか(山口智子)に「舌平目の味付けが濃い」と指摘する。

その一方で、ギャルソンの和田(伊藤俊人)には女性客の見方を教えている梶原(小野武彦)のもとへ赴き、次々と細かい指示を出していく。

千石の圧倒的なプロ意識は、従業員たちにとって時にありがたく、しかしときに重圧そのものだった。

梶原と和田は千石のやり方に不満を抱え、共に範朝(西村雅彦)に相談しに行く。

思い切って翌朝の朝礼で、禄郎に向けて従業員側から「話がある」と申し出ることにした。

禄郎が「三つの袋」をテーマにした話を切り出そうとした矢先、従業員たちから「千石さんについて意見があります」という声が上がる。

和田が店のサービス部門を整理した役割順位表を貼り出し、「千石さんはでしゃばり過ぎ、腰は低いが態度がでかい」と宣言する。

しかしながら、禄郎が改めて全員に「千石さんのやり方はどうですか?」と問いかけると、意外な反応が返ってきた。

稲毛(梶原善)は「俺はそうでもないですよ」、畠山(田口浩正)は「僕も別に」、ソムリエ・大庭(白井晃)は「よくやってると思いますよ」、バーテンダー・三条(鈴木京香)も「私もいいと思いますよ」と、誰もはっきりとした批判を口にしない。

我々が辞めるか、千石さんが辞めるかです。

しずかが「人の仕事にとやかく言ってほしくない」と主張し、範朝も「従業員のチームワークが重要だ、千石さんに少し控えてもらったら」と加勢する中、梶原が遂に「我々が辞めるか、千石さんが辞めるかです」と究極の二択を突きつける。

事実上のストライキ宣言だ。

王様のレストラン 4話が示す「プロ」の本質:あらすじ後半

後半|千石の一手と”偽りの料理”

千石はこの騒動をよそに、夜の予約を確認すると静かにこう宣言する。

「自分が料理をして、店を開ける」——。

シェフでもない千石が厨房に立つという予想外の宣言に、ストライキを起こしたはずの従業員たちは逆に困惑してしまう。

「辞める」と啖呵を切ったものの、千石に対してそれ以上の行動を起こせない梶原たち。

和田がこっそり店の様子を偵察に行き、仲間に報告するという滑稽な展開が続く。

プロとして絶対的な自信を持つ千石の前では、彼らの反発もどこか腰が引けてしまうのだ。

その裏で、別のドラマも静かに動いていた。

禄郎は三条・政子(鈴木京香)に対し、範朝(西村雅彦)には妻と子供がいることを何気なく話してしまう。

実は三条と範朝が交際中であることを禄郎は知らなかったのだ。

この”うっかり暴露”が三条に複雑な感情をもたらすことになる。

また禄郎自身は、三条が自分に好意を持っていると一方的に勘違いしており、その的外れな思い込みが周囲との温度差を生み出す。

三谷幸喜お得意の”すれ違いコメディ”が全開となる場面だ。

やがて夜の開店時間を迎える。

千石がシェフを兼ねる異例の布陣で、ギャルソンは範朝と禄郎、バーテンダーは三条という体制でベル・エキプは営業を開始した。

ストライキを宣言した従業員たちも、蓋を開けてみれば自分の持ち場が気になって仕方がない。

結局、誰もが「自分のレストランを愛している」という事実が、この一夜を通じてじわりと浮かび上がる。

王様のレストラン 4話が示す「プロ」の本質:まとめ

・千石 vs 従業員の対立がついに表面化し、ストライキという形で噴出する

・批判できないのに辞めると言い切る梶原のキャラクターが絶妙に可笑しい

・「偽りの料理の鉄人」というタイトルが示す千石のギャルソン魂

・範朝の妻子を知ってしまった三条の感情変化が後の展開への伏線に

・禄郎の”勘違い”ラブコメが本筋の緊張感を柔らかく中和している

第4話最大の面白さは、「ストライキを起こした従業員が、結局自分の仕事を気にしてしまう」というアイロニーにある。

「辞める」と言いながら店が気になって偵察に行く梶原、千石のやり方に反発しながらも反論できないしずか——。

人間は口で言うことと行動が必ずしも一致しないという、三谷幸喜が得意とする”人間の滑稽さへの愛情”がここに凝縮されている。

タイトルの「偽りの料理の鉄人」とは、当時一世を風靡していたテレビ番組『料理の鉄人』をもじったものと思われる。

千石がギャルソンでありながら厨房に立つという”偽り”の状況を指すと同時に、本物のプロフェッショナルとは何かを問いかけるタイトルでもある。

また、この回では三条と範朝の関係が初めて視聴者に見え始めるとともに、禄郎の的外れな恋愛観も描かれる。

人間関係の複雑な機微を、笑いで包みながら丁寧に積み上げていく三谷幸喜の脚本の巧みさが光る回だ。

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