人気ウェブトゥーン作品『俺だけレベルアップな件』が、蟻編をめぐって「パクリでは?」という声を集めています。
特に比較されているのが、『ハンターハンター』のキメラアント編。蟻型モンスターやその王の存在、ストーリー構成など、確かに気になる類似点がいくつか存在します。
しかし、見方を変えればそれらは現代ファンタジーにおける定番構造でもあり、『俺だけレベルアップな件』ならではの独自性も存在します。この記事では、両作品の構造を比較しつつ、「本当にパクリなのか?」という疑問に対する答えを探ります。
- 『俺だけレベルアップな件』と『ハンターハンター』の蟻編の共通点
- 両作品の構造やテーマの明確な違い
- 「パクリ疑惑」に対する客観的な見解と作品評価
『俺だけレベルアップな件』は本当にパクリなのか?先に結論を言うと……
近年、話題となっている『俺だけレベルアップな件』の「蟻編」を巡って、「パクリでは?」という声が一部で挙がっています。
特に指摘されているのが、『ハンターハンター』のキメラアント編との類似点。蟻型の敵やその進化過程、世界の脅威としての位置づけに、確かに共通点は存在します。
しかし、単なる類似性だけで作品を「パクリ」と断じるのは、あまりにも表層的な見方だと私は感じました。
類似点はあるが、構造とテーマに明確な違いがある
確かに、両作品には蟻型モンスターの登場や、組織的な行動、圧倒的な王の存在などの類似点が見られます。
しかし、それらはファンタジーというジャンルの中で頻出する構成要素であり、どのように描かれ、何をテーマにしているかが作品の本質を分けます。
『俺だけレベルアップな件』では、明確に主人公の成長と克服を主題に据えており、ゲーム的な進化システムと相まって、異なる構造を持っています。
「パクリ」と一言で断ずるには情報が足りない
そもそも「パクリ」と呼ばれるには、意図的な模倣、ストーリー展開の完全な一致、またはオリジナル要素の欠如といった基準が求められます。
しかし、『俺レベ』には独自のシステム(プレイヤー化、影の軍団)や、レベルアップを通じての精神的成長など、明らかに別のコンセプトが存在しています。
読者が感じた「既視感」だけでは、決定的な判断材料にはならず、むしろ現代ファンタジー作品に共通する“構造的似通い”と捉える方が自然です。
そもそも『俺だけレベルアップな件』とはどんな作品?
『俺だけレベルアップな件』は、韓国発のウェブトゥーンとして2018年に登場し、日本でも爆発的な人気を集める作品となりました。
現代の都市を舞台に、突如開いた「ゲート」から現れるモンスターをハンターが討伐していくという設定は、ファンタジーとゲーム要素を融合させた独特の世界観が魅力です。
中でも、主人公・水篠旬が“ただ一人”レベルアップ可能な特異体質に目覚め、最弱から最強へと駆け上がる展開が、多くの読者を惹きつけています。
ゲームシステムがリアル世界に反映された設定
この作品最大の特徴ともいえるのが、現実世界でゲーム的なルールが通用するという設定です。
水篠旬は、ある出来事をきっかけに「プレイヤー」として目覚め、レベルやスキル、ステータスなどがゲーム画面のように表示される世界で生きていきます。
このような設定は、近年の「なろう系」や異世界転生ジャンルでも多く見られる傾向ですが、『俺レベ』の場合は、都市ファンタジー×成長要素として、より洗練された世界観が特徴です。
水篠旬の成長物語が作品の主軸
物語の中心には、最弱だった水篠旬が、自らの力で強さを掴んでいく姿があります。
彼は特別な才能に恵まれたわけではなく、強くなるために苦しみ、時には命をかけた選択を迫られながら前進します。
その姿は多くの読者に共感を呼び、「俺だけ」という孤独な状況が物語の緊張感を高めつつも、努力と成長の物語として胸を打ちます。
『パクリ疑惑』の発端となった「蟻編」とは?
『俺だけレベルアップな件』のストーリーの中でも、中盤以降に登場する「蟻編」は、読者の記憶に強く残るエピソードです。
この章では、人間と融合したかのような外見を持つ蟻型モンスターが登場し、組織だった侵攻と強力なリーダーの存在が描かれます。
その構成や演出が『ハンターハンター』のキメラアント編と似ているとされ、一部で「パクリでは?」という声が広まるきっかけとなりました。
蟻型モンスターが登場する重要エピソード
「蟻編」では、ある島を舞台に、強力なモンスターたちが現れるという異変が発生します。
彼らは単なるモンスターではなく、人間に近い知性と、戦術的な動きを見せ、さらには進化によってさらに強くなるという特性を持っています。
その中でも“蟻の王”と呼ばれる存在は、物語上で非常に大きなインパクトを与え、主人公の試練として最大級の敵として描かれました。
読者の中に芽生えた既視感の正体とは
このエピソードを読んだ読者の中には、『ハンターハンター』のキメラアント編を思い出す人が多くいました。
特に、海を渡って現れる蟻、進化を遂げる知性体の敵、王の支配による秩序ある行動といった点が類似しており、「どこかで見たような……」という感覚を呼び起こしたのです。
しかし、その既視感の背景には、ジャンル共通の構造という可能性も考えられます。
『ハンターハンター』キメラアント編との共通点
『俺だけレベルアップな件』の「蟻編」は、多くの読者から『ハンターハンター』の「キメラアント編」との類似性が指摘されています。
ここでは、具体的にどのような点が重なっているのかを検証し、どこまでが「共通点」でどこからが「独自性」なのかを整理していきます。
比較対象となるのは、主に敵キャラの設定、物語の導入部分、敵の組織的行動です。
人間と融合する蟻の存在
両作品の共通点として最も強く語られるのが、蟻型モンスターが人間と融合するような設定です。
『ハンターハンター』のキメラアントは、人間や他の生物を捕食し、その特性を取り入れて進化します。
一方、『俺だけレベルアップな件』でも、蟻型の敵が知性や戦略性を持ち、進化していく存在として登場します。
この「融合による進化」という構造は似ており、既視感の大きな要因となっています。
組織的行動をとる蟻たちの生態
どちらの作品でも、敵である蟻型モンスターが組織化された構造で動く点は共通しています。
ハンターハンターでは、王と直属の護衛軍、さらに階級分けされた兵士たちが明確に描かれます。
『俺レベ』においても、蟻の王を頂点とした階級構造があり、軍団として機能する様子が描かれています。
このような階層型の敵集団は、戦略性と緊張感を生む要素であり、ファンタジー作品においても頻繁に使用される手法です。
海から現れる導入など、設定面での共通点
さらに細かい点として、物語の導入シーンの一致も指摘されています。
キメラアント編では、強力な蟻が海を渡って島に漂着するシーンが印象的です。
同様に、『俺レベ』でも蟻型モンスターが海の向こうから現れ、島を襲撃するという展開がなされます。
これらの導入の重なりは、読者に「似ている」と感じさせる大きな要因のひとつですが、ゲートやダンジョンといった異世界設定と融合している点で、やはり『俺レベ』の独自性は存在しています。
『俺レベ』独自の設定と展開がパクリと一線を画す理由
確かに『俺だけレベルアップな件』の「蟻編」には、『ハンターハンター』との共通点が見受けられます。
しかし、類似性がある一方で、作品独自の設定と展開もまた明確に存在しています。
ここでは『俺レベ』が単なる模倣ではなく、どのようにオリジナリティを持って物語を紡いでいるかについて見ていきます。
ダンジョンとゲートによる異世界構造
『俺レベ』の世界では、現実世界に突如現れた「ゲート」から異次元のモンスターが出現します。
この設定は、ゲート=ダンジョンという概念を現代都市に融合させたものであり、他作品とは一線を画す特徴的な世界観です。
特に「ダンジョンブレイク」という設定は、ゲートを放置するとモンスターが現実に溢れ出すという緊張感ある仕組みであり、ハンターハンターには見られない構造です。
成長型のゲーム的レベルシステム
もう一つの大きな特徴は、ゲーム的なレベルアップシステムです。
主人公・水篠旬は、他のハンターにはない「プレイヤー」としての能力を持ち、戦闘経験を通じて文字通りレベルアップしていきます。
これはRPGのようなステータス管理と成長の可視化が物語に組み込まれており、読者にわかりやすい成長曲線を提示しています。
対して『ハンターハンター』は、成長や修行の描写こそありますが、数値化された成長システムという点では採用しておらず、この違いが物語のテンポや構成に大きな差を生んでいます。
物語のテーマが「成長と克服」であること
『俺レベ』は、そのタイトル通り「俺だけがレベルアップする」能力を軸に、主人公の孤独と自己克服をテーマにした作品です。
水篠旬は常に己の弱さと向き合いながら力を手に入れ、それを他者を守る手段へと昇華させていきます。
この成長と克服という一本筋のテーマは、『ハンターハンター』のような多層的な主題構成とはまた異なり、明確で一貫性のあるドラマを構築しています。
キャラクター描写から見る2作品の違い
『俺だけレベルアップな件』と『ハンターハンター』は、敵の設定や世界観だけでなく、キャラクターの描き方にも大きな違いがあります。
どちらの作品も強烈な個性を持つ登場人物が活躍しますが、その描写の方向性と深さには、それぞれ独自のアプローチが見られます。
ここでは、主人公と敵キャラという2つの観点から比較してみましょう。
水篠旬とゴン=フリークスの物語構造の差
水篠旬は、作品の序盤で「最弱のE級ハンター」という立場にあります。
そんな彼が“死にかけたダンジョン”で目覚めるプレイヤー能力により、孤独に、黙々とレベルを上げていくという成長物語が主軸です。
一方、ゴン=フリークスは父親探しの旅という強いモチベーションを持ち、仲間と出会いながら精神的にも複雑な変化を遂げていきます。
『俺レベ』は主人公の強さの成長に焦点が当たっており、ストーリーは水篠旬の主観でほぼ進行します。
対して『ハンターハンター』は群像劇的な構成となっており、複数のキャラ視点を通じて物語が深まっていきます。
蟻の王に象徴される「敵キャラの描写」の違い
両作品に登場する「蟻の王」もまた、対比すると興味深い存在です。
『ハンターハンター』のメルエムは、当初こそ圧倒的な暴力と支配で描かれますが、囲碁の少女・コムギとの関係性を通じて人間性の芽生えや葛藤が描かれ、非常に文学的で哲学的な存在となっていきます。
一方、『俺レベ』における蟻の王は、主人公の前に立ちはだかる巨大な敵という役割に特化しており、物語の山場として非常にシンプルで明快な描かれ方がされています。
この違いは、作品全体のテーマ性の違いにも直結しており、『俺レベ』はバトルを通じた成長を、『ハンターハンター』は敵の内面の描写を通じて物語を展開しています。
結末の描かれ方に見る明確な方向性の差
物語における結末の描き方は、作品が何を重視しているかを象徴的に示す部分です。
『俺だけレベルアップな件』と『ハンターハンター』では、「蟻編」という似た舞台設定を持ちながらも、ラストの印象やメッセージが大きく異なります。
この違いこそが、「似ているようで全く異なる作品」であることを明確に示しているポイントだといえるでしょう。
『俺レベ』の完結型ストーリーと勝利の明快さ
『俺レベ』の蟻編は、主人公・水篠旬が絶対的な強さをもって蟻の王を打ち倒すという、カタルシスのある結末で締めくくられます。
敵の脅威が明確に排除され、主人公の成長と勝利が物語としてしっかりと結実するこの展開は、バトルファンタジーとしての満足度が高く、多くの読者の期待に応える形となっています。
このような明快で直線的なストーリー構成は、作品のエンタメ性を強調しており、読みやすく爽快感のある読後感を生み出しています。
『ハンターハンター』の多層的なテーマ性と余韻
一方、『ハンターハンター』のキメラアント編は、単なるバトルの勝敗にとどまらない深いテーマ性が描かれています。
特に、メルエムとコムギの関係性を通じて浮かび上がるのは、人間性とは何かという問いや、命の尊厳といった哲学的テーマです。
最終的に、敵であるメルエムが人間の弱さと優しさに心を打たれながら死を迎えるというラストは、読者に大きな余韻と感情の揺らぎを残します。
このように、戦いの先にある感情や関係性を描くことに重きを置いたハンターハンターは、娯楽作品でありながら文学的な深みを持つ異質な存在と言えるでしょう。
『俺だけレベルアップな件』のパクリ疑惑まとめ:評価はどうすべきか?
ここまで見てきた通り、『俺だけレベルアップな件』と『ハンターハンター』には確かに蟻編を中心とした共通点があります。
しかし、それだけを根拠に「パクリだ」と結論づけるのは、作品が持つ独自性や工夫を見逃すことにもつながります。
では、どのようにこの疑惑を捉え、作品を評価すべきなのでしょうか。
参考作品としての影響はあれど、オリジナル性も強い
ジャンルにおける影響の連鎖は、どの創作物でも起こりうることです。
むしろ、過去の名作の構造や魅力を研究し、そこから独自の世界観を築くことは、創作の正当なアプローチとも言えます。
『俺レベ』は、『ハンターハンター』のキメラアント編と設定上の類似点はあるものの、ゲーム的な成長システム、都市ファンタジー、主人公の一人旅的成長という独自要素が随所に光ります。
つまり、“参考にした部分”はあっても、“単なるコピー”ではないというのが妥当な見方ではないでしょうか。
今後のファンタジー作品に求められる「リスペクトと独自性」
物語やアイデアは、常に過去作の影響を受けながら発展していくものです。
しかし、その上で必要なのは、どれだけ自分の言葉で語り、自分の世界を築くかという独創性です。
『俺だけレベルアップな件』は、まさにそのバランス感覚を持って構築された作品であり、今後のファンタジー系Web漫画やアニメ作品にも、「リスペクトはしても、模倣ではない」というスタンスがより求められていくでしょう。
- 『俺だけレベルアップな件』蟻編にパクリ疑惑が浮上
- 『ハンターハンター』キメラアント編との類似点を検証
- 敵キャラや導入展開に共通要素が存在
- 一方でゲーム的成長や世界観など独自性も強調
- キャラ描写・物語構造・結末の方向性が大きく異なる
- 「参考作品」ではあっても「単なる模倣」とは言い切れない
- 現代ファンタジーとして独自の魅力を持つ作品と評価できる
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