孤独のグルメ、小樽を歩く

ドラマ

北海道・小樽。石造りの倉庫群、運河沿いのレトロな街並み、潮の香りが混じる風景。

ここは、かつてニシン漁で栄えた港町であり、今では観光客に愛される風情ある観光地でもあります。

そんな小樽の街を、グルメドラマの金字塔『孤独のグルメ』の主人公・井之頭五郎(松重豊)が静かに歩いたら――その目に何が映り、その舌にどんな味が残ったのでしょうか?

今回は、「もし『孤独のグルメ』で小樽が舞台になったら?」をテーマに、五郎の視点から街を巡り、実際に訪れてほしい名店を交えながらその魅力を掘り下げていきます。

孤独のグルメ、小樽を歩く:五郎、小樽に降り立つ

札幌から電車に揺られて40分、終点の小樽駅に降り立つ五郎。

ホームに一歩足を踏み入れると、そこはすでに「絵になる」場所。

古びた駅舎の向こうに広がる海の気配が、五郎の食欲をじわじわ刺激する。

「観光地ってのは、腹が減る」

小樽駅からまっすぐ歩けば、石造りの旧手宮線跡地を抜けて運河エリアへとたどり着きます。

カメラ片手に歩く観光客の合間を縫うように、五郎の視線はふと立ち並ぶ飲食店へ。

孤独のグルメ、小樽を歩く:路地裏の寿司屋に誘われて

小樽といえば、やはり「寿司」。港町らしく、ネタの鮮度が段違いであることは全国に知れ渡っています。

観光通り沿いには「政寿司」や「すし屋通り」など、寿司の名店が軒を連ねます。

けれども五郎が選ぶのは、観光客で賑わうメイン通りではなく、ふと見つけた裏路地の小さな寿司屋「すし処 鮨正(すしまさ)」。

「派手さはないが、こういうのが当たりなんだよな」

カウンター越しに握られるのは、キンキの炙り、ヒラメの昆布締め、そして地元で獲れたウニ。

一貫ずつ口に運ぶたびに、五郎の表情が微妙に変化していく。

「これは……北海道の海の答えだ」

店主との会話もほどほどに、ただただ静かに味わい尽くす五郎。

その佇まいは、まさに“孤独のグルメ”の真骨頂。

孤独のグルメ、小樽を歩く:甘味と珈琲でひと息つく午後

満腹の五郎は、少し歩いて腹ごなし。

レンガ造りの倉庫群を背景に、運河クルーズの船が静かに行き交う風景を眺めながら、ふと「小樽あまとう」に立ち寄ります。

ここは昭和の香り漂う老舗洋菓子店。

五郎が選んだのは、地元でも人気の「マロンコロン」と「クリームぜんざい」。

ガラス張りの窓際席で、甘味と苦味のバランスが絶妙な珈琲を片手に、一息つく。

「都会の喧騒から離れて、こういう時間が俺には必要なんだ」

日常から一歩離れた五郎の旅は、ただ「食べる」だけでは終わらない。

味覚と共に、心の整理も行っているように見えるのです。

孤独のグルメ、小樽を歩く:夜の静寂と、路地裏ラーメン

日も暮れはじめ、夜の帳が下りてくる頃。

観光客の姿もまばらになった小樽の街に、ひっそりと暖簾を掲げるラーメン屋を見つける五郎。

店の名は「らーめん初代」。煮干しベースの醤油ラーメンと、厚切りチャーシューが自慢の一杯。

「寿司だけじゃない、小樽の夜はラーメンも語る」

寒さが染みる北海道の夜、熱々のスープが胃にしみわたる。

誰にも邪魔されず、一人ラーメンをすする男の背中に、小樽の夜風がそっと寄り添います。

孤独のグルメ、小樽を歩く:旅の終わりに、ふと立ち止まる場所

帰り際、五郎がふと立ち止まったのは「小樽運河ターミナル」。

元々は駅として使われていた歴史ある建物が、現在はカフェやギャラリーとして活用されています。

「いつかまた、ここに来ることもあるのだろうか」

その表情は、満足とも未練ともつかぬ静けさを湛えていました。

孤独のグルメ、小樽を歩く:まとめ

小樽の“孤独”は、優しさだった。

五郎が小樽で出会ったのは、観光ガイドに載るような派手な名所ではなく、「日常の中にある特別」でした。

寿司、甘味、ラーメン――そのどれもが、素材の味と真摯に向き合った“料理人の誠実さ”に溢れていました。

そして、どの店でも「過剰に話しかけてこない」適度な距離感が、五郎にとっては何よりのごちそうだったのでしょう。

孤独であることが、むしろ心地よい、そんな空気が小樽には確かに流れていました。

「やっぱり、一人飯は……いいな」

静かな港町・小樽で、五郎はまた一つ、自分の中の“食の記憶”をそっと増やしていったのです。

コメント