『踊る大捜査線』テレビドラマ版は全11話。
そのラストを飾るのが、第10話「凶弾・雨に消えた刑事」と第11話「青島刑事よ永遠に」である。
両話にまたがって描かれるのは、真下正義を襲撃した“最恐の敵”安西を追い詰めていく物語だ。
二話をひとつの事件簿として俯瞰すると、シリーズ全体を貫く「現場 vs 会議室」の主題が最高潮に達し、同時に“刑事の継承”が胸を打つ結末に収束していく。
踊る大捜査線の最終回大好きなんだよね😭いかりや長介さん、伊藤俊人さん、小林すすむさんなど亡くなった人出ていて改めて良い役者を失ったと思う。この芝居はこの人達にしか出来ない。そういうあじのある芝居をする、いや、出来る人達だったと。亡くなってないけど保阪尚希の安西も、ハマり役だった🥺 pic.twitter.com/FhJfMJ8DU6
— 刹那🇩🇪 (@setsunyanko) June 14, 2021
踊る大捜査線、凶悪犯安西の回を深掘り!:第10話――突然の銃撃
雨の夜、真下正義が何者かに撃たれる。
この衝撃的な幕開けは、視聴者に「警察官であっても守られない」という恐怖を突きつけた。
犯人像は曖昧だが、浮上するのは安西という男。
過去に警官殺しの疑惑があり、銃を持ち歩く危険人物であることが示される。
ここから湾岸署は緊張の渦に飲み込まれる。
捜査は本庁の監察部と警視庁の思惑に左右され、所轄の青島たちは行動を縛られる。
だが仲間が撃たれた怒りと悲しみが、彼らを“現場に出るしかない”という一点に向かわせていく。
踊る大捜査線で真下が安西に撃たれた電話ボックスや pic.twitter.com/9yyLyKhoUi
— 大正サウナ 國島チャカフィロ (@knsm_tkhr) April 24, 2015
踊る大捜査線、凶悪犯安西の回を深掘り!:第11話――青島、室井、そして安西
最終話は第10話からの直結。
真下は重体のまま病院に運ばれ、署内は緊張と憤りに満ちる。
青島は独自に動こうとするが、監察官の追及で身動きが取れなくなる。
ここで室井の決断が光る。青島を表向きは“処分”し、実際には現場に送り出すという逆転の采配だ。
一方、和久は安西が絡む「6年前の警官殺し」を追い続けていたことを明かし、青島にバトンを託す。
退職を間近に控えるベテランの執念が、若手刑事の情熱とつながり、事件は“単なる犯人逮捕”を超えた意味を帯びていく。
踊る大捜査線、凶悪犯安西の回を深掘り!:逮捕劇――都市の雑踏で浮かび上がる凶悪犯
捜査線上に浮かんだのは西麻布のクラブ。
銃の受け渡しが行われるという情報を掴み、青島と室井は張り込む。
やがて現れる頬に傷のある男――安西。張り詰めた空気の中、わずかな隙を逃さず「確保!」。
安西はついに逮捕される。
派手な銃撃戦ではなく、張り込みと情報の積み重ねで掴む瞬間。
これこそ『踊る大捜査線』らしい現場主義のリアリズムである。
踊る大捜査線、凶悪犯安西の回を深掘り!:取調べ――六年前の因縁
安西は取り調べで、6年前の警官殺しを頑なに否認する。
だが和久は長年の経験から安西の仕草や発言に確信を抱き、青島に追及を託す。
ここで示されるのは“刑事の仕事とは何か”という問いだ。
犯人を追い詰めるだけでなく、警察官の誇りと矜持を未来へ継承すること――それが和久から青島へのメッセージであった。
踊る大捜査線、凶悪犯安西の回を深掘り!:安西という“最恐”
安西の恐ろしさは、怨恨や組織的背景ではなく、“衝動と冷酷さの近さ”にある。
職務質問の一瞬が銃撃へ転化し、都市の安全が簡単に崩れる。
この“無差別性”が彼を「最恐の敵」たらしめる。
演じたのは保阪尚希(当時:保坂尚輝)。
端正な顔立ちの裏に冷酷さを潜ませ、崩れない不気味な静けさを漂わせた。
その存在感が、安西というキャラクターを一過性の犯人ではなく、シリーズを象徴する脅威へと押し上げた。
踊る大捜査線、凶悪犯安西の回を深掘り!:クライマックス――査問会と刑事の矜持
事件後、青島は査問会で降格処分、室井も訓告を受ける。
だが二人はそれを受け入れる。
青島は「組織を変えるのは室井さんにしかできない」と言い、室井は「現場を守るのはお前だ」と応える。
互いが互いを認め、役割を託し合う姿は、シリーズ全体を締めくくる象徴的な瞬間だ。
踊る大捜査線、凶悪犯安西の回を深掘り!:まとめ
現場主義の貫徹
会議室の論理に縛られず、現場で証拠を掴むことで事件を解決した。
継承の物語
和久から青島、青島から室井へ――刑事の視線と責任が世代を超えて受け継がれる。
都市のリアリズム
クラブや路上など日常の風景が、一発の銃声で非日常へ反転する恐怖を描いた。
エンディング――“会議室で起きていない”のその先へ
第10話と11話を通じた安西事件は、最終回を単なる犯人逮捕劇ではなく、刑事の仕事そのものを描くドラマに仕立てた。
撃たれた真下は回復の望みを残し、和久は退職の背中でバトンを渡す。
青島は処分を受けても現場に立ち、室井は上から変える力を得る。
『踊る大捜査線』は、現場の矛盾や組織の硬直を描きながらも、最後に「人を信じ、責任を引き受ける刑事たち」の姿を提示した。
最恐の敵・安西は、そのメッセージを浮かび上がらせる“鏡”だったのである。



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