『台風』や『竜巻』は、いずれも風の渦によってできる自然現象ですが、定義や発生過程の違いを説明するとなると難しいですよね。
また、海外の『タイフーン』『ハリケーン』『サイクロン』などとの違いが分からない方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、これらの自然現象の違いについて解説していきます。
台風と竜巻の違い:発生過程で見る性質の違い
台風と竜巻は、どちらも激しい風の渦が作る現象ですが、その発生過程は大きく異なります。
それぞれの発生過程から、性質の違いを見てみましょう。
台風
偶然撮影された
台風の目が神秘的すぎる— 話題のポスト (@A1P4CA) April 13, 2024
台風は、熱帯の海上で発生した低気圧(熱帯低気圧)が、強い風力を持って発達したものです。
台風が発生するのは、海水温度が26~27℃以上ある熱帯の海域です。
暖かい海面からは、たえず水蒸気が空気中に放出され、温められた空気とともに上昇していきます。
上空に行くにつれ気温が低くなるため、やがて水蒸気は雲の粒に変わります(凝結といいます)。
凝結の際に、水蒸気が持っていた『潜熱』と呼ばれる熱エネルギーが空気中に放出され、これによって温められた空気がさらに上空へと昇っていきます(積乱雲の発生)。
上空の空気が軽くなると、地表付近の空気密度はどんどん下がり、低気圧状態となります。
すると低気圧の中心に向け、周囲から風が流れ込んできます。
そこが赤道から5度以上離れた地点であれば、コリオリ力によって空気がカーブしながら流れ込んできます(渦の発生)。
そして、収束した空気は逃げ場がなくなり、上空へと吹き上げられます(上昇気流)。
この繰り返しにより、風速15m/s以上の強風域の直径が数百キロもある巨大な風の渦、台風が誕生します。
竜巻
2016 年にリード・ティマー氏が撮影した、カンザス州ドッジシティ近郊で発生した巨大竜巻の驚異的なクローズアップ映像。
さすがにここまでの竜巻は日本では中々見る事は無いと思いますが、アメリカ中部は大型竜巻が発生しやすい環境にあるそうですよ😱 https://t.co/C5GnHSaYba
— 【公式】カワゴエ・マス・メディア (@KawagoePortal) April 17, 2024
竜巻は、台風の積乱雲から発生することもある自然現象です。
発達した台風や積乱雲は強い上昇気流を持っており、この上昇気流の下に回転する空気の渦があった場合、その渦が縦に引き延ばされていきます。
柱のように細く引き延ばされた空気の渦は、ちょうどフィギュアスケートのスピンと同じ原理で風力が圧縮され、直径が数十メートル~数百メートルの竜巻へと変化します。
台風よりも竜巻の方がはるかに小さいですが、逆にその風力は圧倒的で、一軒家程度の建物であれば丸ごと吹き飛ばしてしまうこともあります。
また、竜巻は台風と違い、陸上で発生することもあります。
空気の渦ができやすい平地であれば、どんな場所でも発生する可能性があり、その発生を正確に予測することは困難です。
そして、台風の寿命が数十時間~数日なのに対し、竜巻の寿命はわずか数分~数十分と短いのも特徴です。
日本では1年間に、平均して25個くらいの竜巻が、主に海岸沿い付近で確認されています。
台風と竜巻の違い:タイフーン・ハリケーン・サイクロンとは?
台風と竜巻の違いについてはお分かりいただけたと思います。
では、海外でよく聞く『タイフーン』『ハリケーン』『サイクロン』との違いは何なのでしょうか?
実はこれらは全て、台風と同じ現象を指す言葉です。
ではなぜ、違う言葉が使われるのかをご説明しますね。
台風とタイフーンは最大風速が違う
ニッポンの台風の基準が国際基準とは違うってシラナカッタ…😲
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「台風」と「タイフーン(typhoon)」の違いです。日本の気象庁は最大風速が34kt以上の熱帯低気圧を「台風」と呼びますが、国際的には最大風速が64kt以上の熱帯低気圧を「タイフーン(typhoon)」と呼びますhttps://t.co/XBKS084fr0 pic.twitter.com/DDa5iGi9BQ— kazu @ 水耕栽培再開してみよかなぁ (@Kazu_Nomad) May 31, 2023
まずは、台風とタイフーンの条件の違いを見てみましょう。
台風
アジア周辺の太平洋に存在し、最大風速が17.2m/s以上であるタイフーン
アジア周辺の太平洋に存在し、最大風速が32.7m/s以上である
いかがでしょうか。
違うのは最大風速の部分だけですね。
実は、台風の語源はタイフーンから来ています。
もともと中国には「激しい風」を意味する『大風(たいふう)』という言葉があり、この発音が欧米に伝わって『タイフーン(Typhoon)』になったという説があります。
そして、さらにその『タイフーン』が日本に渡ってきて、音訳漢字として『颱風』が使われていましたが、後に略されて『台風』になったそうです。
それまで日本では、台風を『野分(のわき)』などという名前で呼んでいました。
恐らく、タイフーンが日本に伝わった時に、風速の条件を日本基準に定義しなおしたのでしょうね。
タイフーン・ハリケーン・サイクロンは地域が違う
台風、ハリケーン、タイフーン、サイクロンの違いとは? | お天気.com https://t.co/PgllEZcYsK #JETSTREAM pic.twitter.com/eDRBah6irl
— 行こう夜!YRY (@Yry20142) April 29, 2021
次に、タイフーン・ハリケーン・サイクロンの条件を見てみましょう。
タイフーン
最大風速が32.7m/s以上で、アジア周辺の太平洋に存在するハリケーン
最大風速が32.7m/s以上で、大西洋と太平洋北部に存在するサイクロン
最大風速が32.7m/s以上で、インド洋、太平洋南部に存在する
この通り、違うのは存在する地域だけです。
ただし、サイクロンに関しては、現象面で異なることがあります。
タイフーンやハリケーンは北半球にしか発生せず、渦の回転方向はどれも反時計回りですが、サイクロンは南半球にも発生する場合があり、この時の渦の回転方向は時計回りになります。
これは、台風の発生過程で解説したコリオリ力が逆方向に働くためです。
タイフーンは台湾・中国・韓国・日本などの地域で見られ、ハリケーンは主に北アメリカ大陸、サイクロンはインド・フィリピン・オーストラリアなどの地域で見られます。
台風と竜巻の違い:まとめ
いかがだったでしょうか?
台風や竜巻は自然界の不思議な現象の一つですが、発生原理については全て解明されています。
人や建物に大きな被害をもたらす災害の原因にもなるため、近年はこうした自然現象を人工衛星などを用いて制御する技術も研究されているそうです。
自然災害を恐れることなく暮らせる日が来るといいですね。
今回は、台風・竜巻・タイフーン・ハリケーン・サイクロンの違いについて解説させていただきました。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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