銀杏が臭い原因は?加工や保存方法、おすすめレシピもご紹介

毎年9月~11月は紅葉の季節。

この時期は、イチョウの木の葉も黄色く色づき、イチョウの実である銀杏(ぎんなん)が旬を迎えます。

銀杏と聞くと、特にイチョウの並木道を歩いたりした経験がある方であれば、あの独特な不快臭を想像するかもしれませんね。

銀杏が放つ、あの特有の臭いの正体は何なのでしょうか?

この記事では、銀杏の臭いの原因や、自分で調理加工する方法、食べ方の注意点などについてまとめてみました。

参考になれば幸いです。

銀杏の臭いの原因:酪酸とエナント酸

銀杏の実が放つ臭いの正体は、その果肉(外表皮)に含まれている物質にあります。

正式な名前は『酪酸(n-ブタン酸)』と『エナント酸(n-ヘプタン酸)』という物質です。

酪酸は、発酵食品であるチーズやバターなどにも含まれる無色透明な油状の液体で、炭素数が4個の短鎖脂肪酸と呼ばれる物質です。

哺乳動物が体外へ分泌する皮脂にも酪酸は含まれており、揮発性があるため、蒸れた足などから発せられるような、特有の不快臭があります。

一方でエナント酸は、酪酸の炭素数が7個に増えた脂肪酸で、酪酸より揮発しにくいものの、同じく油が酸敗したような悪臭を持つ物質です。

銀杏の果肉には、これらが合わさった成分が含まれており、一部を除く多くの野生動物はその臭いを敏感に感知し、強く忌避する傾向があります。

酪酸の例を挙げると、イヌであれば10ppb(0.000001%)、ヒトであれば10ppm(0.001%)の微量な濃度でも感知することができます。

銀杏の果肉にこの成分が含まれているのは、この特徴的な臭いに興味を示す限られた野生動物にのみ食べてもらい種を存続させようという、ある種の生存戦略とも言えるかもしれませんね。

銀杏の臭いの原因:銀杏中毒にも注意

「銀杏は年齢の数より多く食べてはいけない」という言い伝えがあることをご存知でしょうか。

実は、食べられるように加工した銀杏の実にも、ギンコトキシンという人体に有害な物質が含まれています。

ギンコトキシン(4′-O-メチルピリドキシン)は、ビタミンB6によく似た構造をしており、体内でビタミンB6の機能を阻害することが知られています。

ビタミンB6には神経伝達を正常に保ったり、髪の毛や皮膚などの成長を促進したりする働きがありますが、これが阻害されることで痙攣や嘔吐、めまいや呼吸困難といった症状が現れます。

銀杏の実を大量に摂取すると、数時間でこれらの中毒症状が現れ、最悪の場合は死に至った例も報告されていますので、

5歳未満: 食べさせない
小児: 5個
成人: 10個

この数を超えて銀杏の実を摂取するのは控えるようにしましょう。

もし誤って大量に摂取してしまい、体に異常が出た場合はすぐ病院に行き、

・食べた個数
・食べた時間
・いつから症状が出たか
・どんな症状か

を伝えて処置をしてもらいましょう。

無理に吐かせたりすると、痙攣を誘発することになるので避けて下さいね。

銀杏の臭いの原因:加工の仕方

おこわや茶碗蒸しなどの具材でおなじみの銀杏は、果肉を取って殻付きの種の状態にしたものや、さらに殻を取って中身を缶詰にしたもの、それをお酒のおつまみとして揚げたものなどが市販されています。

これらは悪臭の強い果肉を取ってあるため、加工や調理が比較的簡単ですが、自分で拾ってきた銀杏を加工する場合は工夫が必要になります。

ここでは、銀杏の拾い方から加工や保存の方法までを解説したいと思います。

銀杏の実を拾う

イチョウの木から銀杏がとれるのは10月~11月頃です。

この頃は、銀杏の臭いがきつくなる時期なので、木のそばを通りかかった際に分かるはずです。

ちなみに、イチョウの木には雄株と雌株の2種類あり、銀杏が実るのは雌株(葉に切れ込みがない方)のみです。

銀杏は、直接手で触ると皮膚がかぶれてしまうので、素手で触らないようにし、臭いがつかないように、衣服などにも触れないよう注意して下さいね。

水道で手を洗えない時のために、ウェットティッシュも持っておくと便利です。

採集は、スーパーなどでもらう小さなレジ袋を手袋代わりに使い、黄色やオレンジ色のなるべく大きく柔らかい実を拾うのがおすすめです。

銀杏を拾う時は、必ず公道に落ちているものだけにしましょう。

木をゆすったり、私有地に落ちているものを拾ったりすると、窃盗や不法侵入の罪に問われる可能性がありますので、注意して下さいね。

果肉(外表皮)を取る

銀杏の加工で最も大変なのが、臭いの元である果肉を取る作業です。

果肉の取り方には、土に埋めて腐敗させる方法や、水でふやかしてから洗い落す方法などがあります。

土に埋める場合は、2週間~1カ月と時間はかかってしまいますが、果肉が取れて種だけになったものを掘り返して水洗いするだけなので、臭いをあまり気にせず作業できます。

水でふやかす場合は、まず金属製でないバケツに張った水に銀杏を入れ、臭いが拡散しないようポリ袋などに包んだ状態で2~7日間浸けておきます。

その後、バケツの水を入れ換えながら、ビニール手袋やゴム手袋を使って果肉を洗い落としていきます。

コーヒーの空き瓶のような容器に水と一緒に入れ、何度も振るようなやり方でも剥がすことができるでしょう。

果肉を取り除いた種子はザルなどに取り分け、果肉やごみ類は新聞紙やゴミ袋に包んで捨てます。

この作業は周辺が汚れますので、新聞紙などを下に敷いてから行いましょう。

また、使った道具類には臭いが残ってしまうため、なるべく使い捨てにできるものを使って下さいね。

とにかく臭いが強烈なので、外で作業を行う方が良いでしょう。

その際は、近隣の迷惑にならないようにも注意して下さいね。

天日干しする

果肉を完全に取り除いたら、水気を切って盆ザルなどに乗せ、風通しの良い場所で2日間ほど天日干ししておきましょう。

この工程は必ずしも必要ではありませんが、乾燥や殺菌効果によって多少日持ちが良くなります。

殻を取る

市販されている銀杏にも殻付きのものがありますが、殻はそのままだと硬くて手で剥くことができません。

フライパンで炒ったり、鍋で茹でたりすることでも剥きやすくなりますが、一番お手軽なのは電子レンジを使う方法です。

大きめの封筒に殻付きの銀杏を使う分量より少し多めに入れ、口を2~3回折ってしっかり閉じた状態で電子レンジ(500W)で約1分加熱します。

加熱中に銀杏がいくつか破裂することがありますが、封筒に入っているので問題ありません。

取り出した銀杏の殻にヒビが入っていれば、手で剥くことができます。

ヒビがなければ、大きめのペンチやキッチンバサミ、殻割り専用工具など使い、穴になっている部分に挟むと殻を割ることができます。

銀杏の殻を剥く別の方法もあります。

ハンマーやトンカチがあれば、丈夫な台の上に銀杏を乗せ、両サイドを指で支えながら軽く叩くことでもヒビを入れることができます。

あるいは、麺棒やすりこぎなどの棒で上から押すことでもヒビを入れることができます。

その場合は中身が潰れてしまわないように、下に指を入れるなどして力を調節して下さいね。

殻を割って種子の中身が出てきたら、きれいな翡翠色をした形の良いものを選んで使います。

白っぽくなっているものは使えませんので注意して下さいね。

保存方法

銀杏は生の状態だとすぐにカビが生えたり腐ってしまいます。

乾燥させた殻付きの銀杏でも、常温・冷蔵だと1週間程度しか日持ちしません。

フライパンなどで一度火を通しておくと日持ちするようになります。

また、ある程度長期間保存したい場合は冷凍保存がおすすめです。

殻を剥いた状態でラップに小分けし、ジッパー付きのフリージング袋などに入れて冷凍保存しておくと、取り出してすぐに使うことができますよ。

銀杏の臭いの原因:おいしい食べ方

秋の味覚の一つとして知られる銀杏には、免疫力を高めるβ-カロテンやビタミンC、体内の塩分を調節するカリウムといった栄養素が含まれ、健康に良いことも知られています。

銀杏の調理には、炒る・煮る・炊くなどの方法があります。

殻付きのままフライパンで炒る方法は、ほんのりとした苦みを出すことができ、お酒のおつまみとして人気です。

一方で煮る・炊く方法だと、苦味は抑えて甘味を出すことができますので、子どもが食べるのに最適です。

ここでは、銀杏のおいしいレシピをいくつかご紹介いたします。

銀杏の黒こしょう炒め

シンプルながらも、銀杏のおいしさを引き立たせたおつまみです。

黒こしょうのパンチが効いて、お酒との相性が抜群です。

材料(1人分)

・殻を取った銀杏(薄皮付き): 10個
・塩: 適量
・黒こしょう: 適量
・冷水: 適量

作り方

鍋でお湯を沸騰させ、塩(分量外: 適量)と銀杏を入れて2~3分茹でます。

ボウルに冷水を用意し、茹で上がった銀杏をさらしながら薄皮を剥いて、水気を切ります。

フライパンにオリーブオイルをひき、銀杏を入れて中火で1~2分軽く炒めます。

火を止めたら黒こしょうで味付けし、器に盛って完成です。

銀杏の炊き込みご飯

銀杏と秋の味覚の具材を使った炊き込みご飯です。

舞茸の香りが食欲をそそります。

材料(4人分)

・白米: 2合
・銀杏(水煮): 30g
・舞茸: 70g
・人参: 1/2本
・鶏ささみ: 2本
・小ねぎ(小口切り): 適量

<調味料>
・水: 350ml
・白だし: 50ml
・みりん: 大さじ2

作り方

白米は水で洗ってから、ザルに上げて水を切っておきます。

舞茸は石づきを取ってから一口大にほぐします。

人参は皮を剥いて千切りにします。

鶏ささみは1cm角に切っておきましょう。

調味料を作り、炊飯器に白米と一緒に入れ、さらに銀杏、舞茸、人参、鶏ささみを入れて炊飯します。

炊きあがったら茶碗に盛り付け、小ねぎを散らして完成です。

銀杏入り茶碗蒸し

蒸し器を使わず鍋で調理できる茶碗蒸しです。

”す”が入りにくく、作りやすい調理法になっています。

材料(4~5人分)

・銀杏: 人数分
・三つ葉: 適量
・鶏肉: 100g
・干し椎茸: 2枚

<卵液>
・卵: 2個
・だし: 2カップ
・醤油: 小さじ1
・塩: 適量
・みりん: 小さじ

だしの分量は、かつおだしにだしの素ひとつまみが目安です。

お好みでかまぼこや白身魚などを加えても美味しいでしょう。

作り方

卵をボウルに入れて軽く溶き、だし、しょうゆ、みりんを加えて混ぜ合わせたら、塩で味を整えます(卵液)。

卵液をザルなどで漉し、不要なものを取り除きます。

殻・薄皮を取った銀杏にラップに巻き、軽く電子レンジにかけておきます。

鶏肉は小さめに切って脂肪や筋を外し、ざるに入れてから熱湯をかけ、余分な脂分を落とします。

干し椎茸は、もどして軸を外したものをスライスします。

茶碗蒸し容器に具材と卵液を等分に入れ、アルミホイルでふたをします。

茶碗蒸し容器が入る鍋に半分くらい浸かる量の水を入れ、沸騰するまで火にかけます。

沸騰したら容器を入れて、ゴトゴトと音が立たない程度に火を弱めながら10~15分加熱します。

串を刺して透明な汁があるかどうかを確かめ、火が通ったら三つ葉を乗せて完成です。

銀杏の臭いの原因:まとめ

いかがだったでしょうか。

「生きた化石」とも呼ばれるイチョウは一風変わった植物ですね。

銀杏の実を加工したり食べる際は、注意や工夫が必要です。

しかし、銀杏は秋の味覚の代表的存在でもあります。

もし銀杏を食べる機会があれば、作ってくれた人に感謝しながら頂きたいですね。

今回は、銀杏の臭いの原因や、自分で調理加工する方法、食べ方の注意点などを解説させていただきました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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